
コアピン(鋳抜きピン)
SGピン
ダイカスト金型は鋳造時の急激な過熱と、製品取り出し後の外部スプレー等による急冷が繰り返される過酷な状況下におかれています。そのためサビとクラックが発生しやすい環境にあり、冷却穴のサビやクラックの発生を抑制することが出来きたら長寿命化できるのではないか、という発想からSGピンは誕生しました。ここではSGピンが誕生した背景と特徴を紹介します。
SGピンとは
SGピンはサビに強い薄肉パイプを成形・加工し、コアピンの冷却穴に挿入・特殊密着させ、冷却水による冷却穴のサビやクラックの発生を抑制することによって長寿命化を目的としたコアピンです。
SGピンが誕生した背景
ダイカスト金型の鋳造においてサビとクラックは数々の鋳造トラブルを引き起こします。
サビとクラックを抑制することはできないのか、冷却穴からサビやクラックを発生させずに寿命を延ばすことができたらその効果は計り知れないものがあるのではないか、当社の穴あけ技術を生かして世の中にない商品を作れるのではないか、そんな背景のもと、当社の『SGピン』は誕生しました。
通常の冷却穴ピンとSGピンの違い
通常の冷却穴ピンは、下図のように冷却水によってサビやクラックが進行していく、またはカルキやシリカといった不純物が堆積していきます。
対してSGピンは、下図のように水に強いSUSの膜を付け、冷却水が直接ピンに触れることを防ぎサビを抑制します。
SGピンの狙い
冷却穴のサビを抑制することにより、腐食クラックの抑制や通水量の安定につながり、品質の安定、コアピンを長寿命化することによるコストメリットを狙っています。
冷却穴のサビとクラック
金型自体が鋼材でできており、冷却媒体には工業水が使用されているので冷却穴内部は極めてサビの発生しやすい環境にあります。
冷却穴の加工方法はガンドリルで加工していることが一般的で、ガンドリル加工のため冷却穴内部の表面にはツールマークである凹凸が発生し、凹凸に水が残留することにより水が蒸気となりエッジ部から鋼材組織に侵入します。侵入したことによりサビが発生し、サビによる腐食が進み外部からのヒートクラックと結合することにより水漏れが発生します。
SGピンの5つの特徴
SGピンが通常のコアピンより優れている代表的な特徴が5つあります。
- サビの抑制効果
- 冷却効果の維持
- カルキやシリカの付着軽減
- 初期状態の維持
- SR形状による水漏れ防止
1.サビの抑制効果
ステンレスのサビにくいという特徴を生かし、SUSパイプ(SUS304L)を冷却穴に入れ特殊密着させることにより冷却穴内部のサビを抑制しています。
食塩水による腐食試験
下図はSKD61にSUSパイプを入れて密着させ、塩水につけた後1週間放置した状態です。SKD61部は腐食が進行していますが冷却穴は進行していません。このようにSGピンでは冷却穴内部の腐食を抑制することが可能です。
2.冷却効果の維持
SUSパイプの肉厚はt=0.1㎜~0.25㎜になります。冷却穴とSUSパイプの径と肉厚のバランスにより、通常のコアピンと同様の冷却効果を維持できるよう計算されています。
3.カルキやシリカの付着軽減
SUSパイプのため加工で発生するツールマークがありません。ツールマークによる凹凸がないためカルキやシリカの付着が軽減されます。
4.初期状態の維持
サビや不純物の付着がなくなることにより初期状態が長く維持され、長寿命化につながります。
5.SR形状による水漏れ防止
SUSパイプの先端は特殊成形によりSR形状にしています。冷却穴底部のSR部までしっかり密着させることにより水漏れを抑制しています。
SGピンの2つの懸念事項
サビやクラックに強く長寿命化が期待されるSGピンですが、使用する上でご理解頂きたい懸念事項が2つあります。
- SUSパイプの破損や抜け
- 腐食の促進
1.SUSパイプの破損や抜け
SGピンは寿命まで使用するとSUSパイプが破損したり抜けることがあります。クラック発生時にはSUSパイプも破損するため水漏れが発生します。水漏れを懸念される場合は当社の別商品であるSUSブッシュのご検討をおすすめしています。
2.腐食の促進
SUSパイプはステンレス鋼のため金属の粒界を侵食し腐食する粒界腐食の発生が懸念されます。粒界腐食が発生すると亀甲状に割れが入りピンの腐食を促進する可能性があります。
粒界腐食とは
ステンレス鋼は耐食性を確保するためにクロムを含んでいます。クロムは酸素と反応して金属表面に不動態皮膜(酸化クロムの薄い膜)を形成し腐食から保護します。しかし、ステンレス鋼を高温で加熱(通常、450~850℃程度)すると、鋼内でクロムが炭素と結びついてクロム炭化物(Cr₃C₂)が粒界に析出し粒界でクロムの濃度が低下しその部分の耐食性が低下します。耐食性が低下したステンレス鋼は粒界が不安定になり、その部分が電気化学的に反応しやすくなります。これにより腐食が粒界に沿って進行し金属全体が脆くなることを粒界腐食といいます。
冷却穴とSUSパイプの密着性
当社の高度な穴あけ技術と長年の研究によりたどり着いた冷却穴とSUSパイプのクリアランスに加え、SUSパイプを密着させ熱処理をすることによってSUSパイプを特殊密着させます。密着させた状態で熱を加えることにより拡散接合に近い状態が発生し、より密着性を高くしています。
拡散接合とは
同種または異種の材料同士を密着融点以下の温度条件で塑性変形をできるだけ生じない程度に加圧して、双方の表面の接触によって接合、接着させる方法です。一部では”熱プレス”とも呼ばれています。
SGピンの冷却効果
サビないことは理解できたがSGピンは冷却効果を維持できるのか?そんなお客様の声をもとに当社では以下のような検証を実施しました。
通常のコアピンと同径での比較
冷却穴φ3のコアピンに対し、コアピンと同径の冷却穴径にしSUSパイプを密着させたところ、冷却効果は10~20%落ちるということが判明しました。これはSUSパイプという介在物の存在と、SUSパイプにもt=0.1㎜~0.25㎜の肉厚があるため冷却穴が小さくなることが原因として考えられます。
冷却穴をφ3からφ3.3に変更し比較
冷却穴をφ3からφ3.3に大きくしSUSパイプを密着させテストを実施したところ、通常のコアピンと同様の冷却効果を維持できることがわかりました。φ3.3に変更しSUSパイプを密着させることによりφ3の穴径を維持できるため、冷却穴φ3のコアピンと同様の冷却効果を得ることができます。下記が冷却効果を比較したサーモ画像になります。冷却効果に対策は必要だが流量には変化がないという結果も検証結果から判明しています。
SGピンの熱伝導率
SGピンではコアピンとSUSパイプの密着性を高めるため充填剤を使用します。
充填剤の使用量による熱伝導率の変化を検証しました。
検証方法と測定方法
条件の違うテストピース(以下、TP)を5種類準備しSUSパイプの径を変化させることにより冷却穴との隙間をつくり、約80℃の温水を通水し、5秒間隔で30秒間の表面の温度変化を測定しました。テストピースの条件は以下となります。
- 充填剤無し(SUSパイプ無し。通常のコアピンを想定)
- 充填剤無し(SGピン仕様)
- 充填剤片側t=0.25mm(TP冷却穴径より、SUSパイプ外径が0.5mm細い)
- 充填剤片側t=0.50mm(TP冷却穴径より、SUSパイプ外径が1.0mm細い)
- 填剤剤片側t=1.00mm(TP冷却穴径より、SUSパイプ外径が2.0mm細い)
以下が検証風景の写真となります。
検証結果
上図の経過から①と②では開始15秒まで通常のコアピンの方がSGピンよりも熱伝効果が高いことがわかりますが、20秒を過ぎるとほぼ同等の数値であることがわかります。
③~⑤までの経過から冷却穴とSUSパイプの隙間が大きく充填剤の使用量が増えると熱伝効果は悪くなることがわかりました。
下図が温度変化のグラフとなります。
SGピンのまとめ
- サビ、クラックの発生を抑制しコアピンの長寿命化が期待できる
- 冷却穴径とSUSパイプの肉厚により冷却効果は維持することが可能
- 寿命によりSUSパイプの破損や抜けが発生し水漏れする可能性がある
- 粒界腐食の発生により腐食を促進してしまう可能性がある
当社のSGピンはサビとクラックを抑制することにより長寿命化が期待できます。懸念事項もいくつかありますがお客様からは寿命を延ばすことが出来た、という高評価を頂くことも多いです。冷却穴があるコアピンを全てSGピンに切り替えて頂いたお客様も実績としてあります。冷却穴のサビとクラックを抑制しコアピンの寿命を延ばしたい、そんなときにはSGピンのご検討をおすすめします。