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2025.09.20
鋳造工法の種類・特徴 6選
鋳造はいくつか種類があって、それぞれ特徴があるため加工方法・コスト・目的に応じて選択する必要があります。この記事では、代表的な6種類の鋳造工法をあげて、それぞれの加工法とメリット・デメリットを紹介していきます。
鋳造とは
鋳造とは、金属(鉄・アルミ・銅などの合金)を熱して溶かし、型の空洞部分へ流し込み冷やし固める加工法を指します。溶かした鉄を流し込むための型は「鋳型(いがた)」と呼ばれ、材質や用途によって金型・砂型・石膏型を使い分けます。
【目次】
ダイカスト鋳造(HPDC)
ダイカスト鋳造は溶かしたアルミニウムや亜鉛、マグネシウムなどの合金(溶湯)を素早く高圧で金型内に充填させ、瞬時に冷やし固めて製品を成形します。ダイカストの一番の特徴は、この極めて高い圧力と速度による充填であり、これにより非常に短いサイクルタイムでの大量生産が可能なことです。主な用途は自動車、精密機械、家電製品、電動工具のボディーなど、様々な工業製品の部品製作に用いられています。
ダイカスト鋳造のメリット
・成形された製品の寸法精度が高い
・短時間で大量生産ができる
・鋳肌(成形した製品の表面)が滑らかに仕上がる
ダイカスト鋳造のデメリット
・金型コストが高い(少量生産には不向き)
・鋳巣(空洞や気泡)が発生しやすい(強度が必要な製品には不向き)
低圧鋳造(LPDC)
低圧鋳造はダイカスト鋳造と反対で金型に低圧かつ低速で溶かした金属(溶湯)を流し込むのが特徴です。これにより気密性が高い製品作りが可能で同時に強度も高まります。強度を必要とする自動車の部品の製造に用いられることが多い加工方法です。
低圧鋳造のメリット
・気密性・強度に優れている(巣穴が発生しにくい)
・良品率が高い(内部欠陥が少ない)
・砂型や重力鋳造に比べて寸法精度が高い
低圧鋳造のデメリット
・生産性が低い(製造時間がかかる)
砂型鋳造
砂型鋳造は成形したい製品の形状と同じ「原型(木型、金型、樹脂型など)」を用意することから始まります。この原型を砂の中に埋め込み、周囲を固めて鋳型(上型と下型)を形成します。原型を取り除くと、その内部に製品の形状をした空洞ができます。この空洞に溶かした金属(溶湯)を湯口から流し込み、冷却・凝固させます。金属が固まった後、砂型を壊して鋳物を取り出し、不要な部分(湯口、押湯など)を切断・研磨して最終製品が完成します。砂型は基本的に一度の使用で壊されますが、使用済みの砂は回収・再生処理によって再利用することができます。
砂型鋳造のメリット
・納期対応が早い(寸法精度を求めずに小ロットで早く欲しい場合に向いている)
・複雑な形状の製品でも成形できる
砂型鋳造のデメリット
・寸法精度が低い(上下型のズレが生じたり、鋳造時の熱による膨張・収縮による寸法のバラツキがある)
・ランニングコストが高い(成形させるごとに砂型を壊して作り直すため)
・鋳肌(成形した製品の表面)が梨地のようにざらざらしてキレイではない
グラビティ鋳造(重力鋳造またはGDC)
グラビティ鋳造はその名の通り溶かした金属(溶湯)を重力を使って型に注ぎ込み製品を成形する、古くから用いられている工法です。金属の自重だけで形を作り、金型が比較的簡易的な構造で済むため初期費用が抑えられ、少量の生産に向いています。
グラビティ鋳造のメリット
・大型設備の必要がなく導入コストを抑えられる
・気密性が高い(鋳巣が発生しにくい)
グラビティ鋳造のデメリット
・溶湯の充填時間がかかり、冷却時間もかかるため生産性が低い
・重力のみで圧力を加えない鋳造法のため、湯流れに懸念があるので、薄肉製品の製作は不向き
PF鋳造(無孔性ダイカスト法)
PFダイカスト法(無孔性ダイカスト法)は、ダイカストの代表的な欠陥である空気やガスの巻き込みによる鋳巣の発生をおさえることができるダイカストの工法です。溶湯を圧入する前にキャビティ、湯道、スリーブ等の空間の空気を酸素に置換し、高速で射出されたアルミ合金と酸素を反応させることで、気泡の少ない緻密なダイカストを得ることができます。主な用途として、バイクのサスペンションメンバーやバルブ、エアコンコンプレッサのような耐圧部品、熱処理を必要とする部品、強度にバラツキが少ないなど高い信頼性を必要とする部品に利用されます。
PF鋳造のメリット
・熱処理が容易で、重要保安部品に適している
PF鋳造のデメリット
・製造コストが高い(少量生産には不向き)
石膏鋳造
金型を使用せず、鋳型に石膏を用いて鋳造を行う工法です。図面または3Dデータより作成したマスターモデルを用いてゴムやシリコンで一次型を作成し、その一次型を枠にセットしさらにシリコンを流し込んで二次型を作成。その二次型に石膏を流し込んで石膏鋳型を作成します。ダイカスト鋳造と同等レベルの品質精度の鋳造が可能で、緻細な凹凸も正確に再現できます。向いている用途として、金型ダイカスト品の量産前の試作や小ロット限定の鋳造品が挙げられます。
石膏鋳造のメリット
・金型を使わないからイニシャルコストが不要
・短納期可能なので、試作品・展示サンプル品に最適
・ダイカストレベルの寸法精度と鋳肌で製作可能
石膏鋳造のデメリット
・内部結果の鋳巣リスクが高い
・鉄系の素材には不向き(石膏は高温に耐えにくい)
まとめ
少量ロット/試作 経済性比較
ダイカスト鋳造 | 砂型鋳造 | 石膏鋳造 | |
型費・設備費 | ▲ | ◎ | 〇 |
鋳造サイクルタイム | ◎ | ▲ | ▲ |
後加工工数 | ◎ | ▲ | 〇 |
製品一個当たりの費用 | ◎ | ▲ | 〇 |
多量生産適応性 | ◎ | 〇 | ▲ |
少量ロット/試作 寸法・形状特性比較
ダイカスト鋳造 | 砂型鋳造 | 石膏鋳造 | |
寸法精度 | ◎ | ▲ | ◎ |
外観・面粗度 | ◎ | ▲ | ◎ |
鋳型転写性 | ◎ | ▲ | ◎ |
設計自由度 | ▲ | 〇 | ◎ |
鋳造工法のメリット・デメリットを理解することで、最適な鋳造工法を選択することができます。また寸法精度が高い製品に対して、鋳造工程以降の加工工法で対処する計画も立てられます。内部欠陥に対しての適した鋳造工法や管理方法なども選択するうえで重要なポイントになります。製品品質・製品コスト・納期・製品ロット数など総合的に考慮して、スグロ鉄工は最適な鋳造工法をお客様に提案いたします。